オーロラ ストーリーズ

自然のままのオーロラが見たい
光害のないユーコンのツンドラ地帯で

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最高のオーロラが現れた

夜の23時半ごろになって、夜空から雲が消えていた。夕方から流れだして雲はオーロラが出る時間に合わせるように、星空から移動してくれていた。満天の星空だ。

南の空からは天の川が天に向かって続いている。もうこの星景だけでも、十分すぎるぐらい素晴らしい大自然だ。

そして予想した北東から北西にかけて、オーロラのアーチがうっすらと現れる。ちょうどこのアーチの頂点が北になる。この出始めのオーロラは、オーロラを見慣れない人だと見逃しかねない薄いものだが、カメラで写すとしっかりとオーロラの緑と赤の色が写る。それでオーロラの出現を確認する。後はこれがどんどんと明るく、広がっていくのを待つだけだ。

そしてブレイクアップは夜中の3時ぐらいに始まった。

北東の地平線を狙って構図を組んでいた私のカメラ位置は移動する必要が出てきた。東を狙うように三脚を移動する。

オーロラの動きが激しくなり段々と高くなるにつれ、北東から北西を結ぶアーチが、東から西を結ぶアーチに広がってきたのだ。東から西ということは頂点は北ではなく、真上にある。まさにオーロラの真下に自分がいるような状態だ。

もう1台のカメラにセットしていた魚眼レンズで、回転しながら水平カットを続けて撮る。これはオーロラの景色を360°のパノラマビューにするための撮影方法だ。360°VRパノラマはGoogleEarthなどでだいぶ身近に見る事が多くなって来たが、高感度が必要で、しかも動体であるオーロラでの撮影は非常に困難なものだ。

私はオーロラ写真家の田中雅美さんにこのパノラマ撮影技法を教えていただき、今回この撮影ができた。自分が見ていたオーロラの印象と一番近いのがこのパノラマでの表現だ。先駆者の田中雅美さんに敬意を払いつつ、二番煎じの表現だがここに掲載させていただく。満天を埋め尽くすオーロラは、どんな広角レンズでも見え方が違い、このパノラマ方法でないと表現できないからだ。

私が今まで見たことがあるオーロラの中で最高のものだった。

それをトゥームストーンという最高の自然の中で見る事ができた。私にとってこのオーロラ写真は会心の作といってもいい。カナダの山と池とオーロラと水面の輝きを撮りたかった。しかもそれを光害のない場所で。

ユーコンの自然は、厳しいが時に素晴らしい美しさを私たちに見せてくれる。4日間のキャンプでの待機生活の我慢など吹っ飛んでしまう光景が目の前に広がる。

私たちは「素晴らしい自然の中に生きている」その確信が、自分への自信と繋がる。オーロラってそんなすごい力を持っている。 オーロラはあなたの自然観や人生感を変えかねない力があるものなのだ。そんなオーロラを見て欲しいと思う。

(協力:Tomohiro Uemura、田中雅美)

自然のままのオーロラが見たい
光害のないユーコンのツンドラ地帯で
  1. オーロラのブレイクアップ
  2. 自然って一緒に見る人数で感じかたが変わる
  3. できることなら光害がないオーロラが見たい
  4. トゥームストーンでオーロラが見たい
  5. トゥームストーンでのキャンプ生活
  6. 「晴れてくれ、晴れてくれ」
  7. 撮影の準備を抜かりなく
  8. 最高のオーロラが現れた

著者プロフィール

小原玲 (動物写真家)

1961年東京都生まれ。群馬県立前橋高校在学中に「第3回高校生フォトグランプリ」(旺文社)のグランプリを受賞したことから写真家を志す。茨城大学人文学部卒業後、写真プロダクションを経て、フリーランスの報道写真家になる。LIFE、TIME、Newsweek、ParisMatch、ASIAWEEKなど世界中の雑誌で活躍する。