オーロラ ストーリーズ

自然のままのオーロラが見たい
光害のないユーコンのツンドラ地帯で

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撮影の準備を抜かりなく

コンパスで北と北東、北西をチェックしながらカメラのセッティングを始める。オーロラ撮影では三脚の本数分のカットが撮れるといっていいので、できれば多くの三脚を使いたいが、人間の集中力はカメラ3つが限度だと思っている。本当に集中する撮影の時には2つぐらいまでがいい。カットの種類の数の多さではなく、その日に撮れるカットの質の良さを向上させたいからだ。

ホタル撮影で高感度撮影はお手のものの私は、あえて小型のミラーレスカメラをオーロラ撮影に選ぶ。なぜプロ用の一眼レフカメラを使わないかというと、一番は画質が悪いからだ。プロ用の一眼レフは主にオリンピックのような室内スポーツを撮るための高感度性能を上げていて、高感度ノイズをボカしたり、塗りつぶす画像処理が行われている。それが私のように本当に暗い中の風景を撮るものには、自然なディテールの消失となってしまうのだ。

そしてセンサー前にあるローパスフィルターは、オーロラや星景を撮る者にとって、まったく不要で、有害なものでしかない。このローパスフィルターがあるだけで、高感度性能は1段近く落ち、そして星の色が表現できなくなる。そして今回判ったのだが、オーロラの赤い色もローパスがあるカメラよりも、ローパスがないカメラの方が美しく描写される。

私が今回メインに選んだ富士フイルムのX-M1とXF18mm/2のレンズは、観光客でも手が届く値段のカメラだと思うが、オーロラ撮影で私が「これしかない」と選んだカメラでもある。とても小さくて軽いために、行動が身軽になりとても撮影が機敏にできた。周囲に他の人がいる時に液晶の光を漏らさないように、汎用の液晶フードのようなものは必要だが、それで最高のオーロラカメラになる。数十万円のプロ用一眼レフカメラよりもよっぽどオーロラにはこの組み合わせの方が向いている。

カメラのレンズの無限調整は早めに明るい星を、液晶の拡大表示をして合わせる。これはカメラやレンズや個体によって精度が出ていない事が多々あるので、その日の始まりに確実に合わせて置く必要がある。

感度は富士のようなローパス無しのカメラならIS06400、他社のローパス付きカメラならISO3200がいい。レンズの絞りは開放、そしてシャッター速度は3秒ぐらいから30秒ぐらいまで(ISO6400の場合)、すぐに変えられるようにシュミレーションをしておく。バッテリー交換やSDカードをどう交換するかもシュミレーションし、どのポケットに何が入っているかを確認する。

そしてオーロラの出を待つ前に、衛星端末で自分の居場所を家族に伝える。撮影が始まったらもう休む間もないから、先に居場所を送っておかないと、万が一私がクマに襲われても被害にあった後では居場所を伝えられないからだ。

自然のままのオーロラが見たい
光害のないユーコンのツンドラ地帯で
  1. オーロラのブレイクアップ
  2. 自然って一緒に見る人数で感じかたが変わる
  3. できることなら光害がないオーロラが見たい
  4. トゥームストーンでオーロラが見たい
  5. トゥームストーンでのキャンプ生活
  6. 「晴れてくれ、晴れてくれ」
  7. 撮影の準備を抜かりなく
  8. 最高のオーロラが現れた

著者プロフィール

小原玲 (動物写真家)

1961年東京都生まれ。群馬県立前橋高校在学中に「第3回高校生フォトグランプリ」(旺文社)のグランプリを受賞したことから写真家を志す。茨城大学人文学部卒業後、写真プロダクションを経て、フリーランスの報道写真家になる。LIFE、TIME、Newsweek、ParisMatch、ASIAWEEKなど世界中の雑誌で活躍する。