オーロラ ストーリーズ

カヌーイストの憧れ、ユーコン・リバーのもうひとつの魅力
ある夜、僕らはオーロラに照らされた

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息子と再びユーコンに浮かぶ。カヌーとオーロラとリンクスと

「いつかはユーコン」。

カヌーでの旅をはじめた人々のうちの多くにとって、ユーコン川でキャンプをしつつ旅をすることは憧れのひとつだろう。僕も、今はシーカヤックという海を行くカヤックに乗ることが多いが、ファルトボートと呼ばれる折りたたみ式のカヤックに、キャンプ道具を載せてキャンプをしながら旅を楽しんでいた時期があった。そのときはやはり「いつかユーコンを下ってみたい」と思っていたのだ。

その夢を果たしたのは、2008年、5年前のこと。そのときの様子は、本オーロラ王国カナダに寄稿させていただいた「カヌーイストの憧れ、ユーコンリバーのもうひとつの魅力」(1~3)に書いた通り。自分にとってはユーコンに魅力がひとつ加わった。それがオーロラだった。

そして今年、再びユーコンを訪れた。中学2年生の我が息子とともに。前回の旅の様子を家族に話したときに、息子はオーロラに興味を示した。彼は以前、JAXAが募集した古川宇宙飛行士の「うちゅう不思議実験」に応募し、見事に選ばれたという宇宙好き。僕も彼をはじめとして、家族にもっとも見せたいと思ったのがオーロラだった。

そして訪れたユーコン、前回はサプライズだったが今回は期待となる。しかし時期は夏。もっとも日が長い月は過ぎたが、それでも夜11:00過ぎまで明るい。オーロラを見るには決して条件はいいとは言えないが、それは前回と同じである それに自然現象である以上、今回も確実に出るという保証はどこにもない。先にホワイトホースに入った人に聞いたが、それらしいものを見たかな・・・、という程度であった。

今回も現地のカヌーショップ、KP(カヌーピープル)のツアー。決められた時間でユーコンの魅力を最大限享受しようと思ったら、ツアーがもっとも効率がいい。レイクラバージュを水上機でスキップし、ユーコン川の流れ出しのところで代表のスコットに再会した。握手しつつ「また戻ってきたね」と彼は言った。

そして前回と変わらぬユーコンと川旅が始まった。日本であれば「前来たときはブツブツ・・・」という言葉が頻発したろうが、ここは前回よりも水量が多いという他は、ほとんど変わらない。ただ、オーロラは3日間、姿を現さなかった。「これはもうあのキャンプ地にかけるしかないよね」、ガイドのKATSUが言う。あのキャンプ地とは前回オーロラを見ることができたところだ。そこは南北方向に川が流れていて、ちょっと高台にテントサイトがある。北の方が開けているので、オーロラを見るにはうってつけのロケーションなのだ。ただ流れが速くなるところがあり、かなり手前から準備していないと行き過ぎてしまう。あとは他のグループが先に入っていないかだ。

夏のシーズンということもあり、僕らの前にもいくつかのグループが下って行ったが、幸い、そこにつけるカヌーは無かった。「よし!上陸だ!」。増水で流れの速まった川の流れをみつつ、皆上手に着岸した。もう3日も下れば立派なカヌーイストだ。

そして夜中の0:30ごろ。なんとなく白い煙が見えてきた。

「あれ、オーロラじゃね?」以前と同じ前兆だ。撮影してみると、雲とは異なり、緑色の光る筋がモニターに映し出された。間違いない!オーロラだ!綿菓子のような白いふわふわは、なんとなくカーテン状になってきた。

「オーロラが出たぞ~!」KATSUは皆を起して回った。光が弱くなり、消えるまでに、おおよそ1時間くらいだったろうか。

「いやー、見えたねえ」「見られるんだねえ」と皆、興奮気味だ。そしてついに現れたオーロラ。画像では緑色だが、肉眼では白っぽく見える。前回に続いて同じサイトだった。僕らはこのサイトに「オーロラ・サイト」という名前をつけた。息子は直前まで「オーロラを見る」といって頑張って起きていたものの、ついにダウン。「出たら起してあげるから」と言っておいたのだが、結局寝入りばなを起されて半分眠りながら上を向いていた。彼の記憶に残ったかどうか・・・はなんとも言えないが、君にはまだチャンスはいくらでもあるだろう。翌日も深夜3時ごろに出たらしいのだが、夜更かし&ほぼ1日川の上にいた僕らは起きることができなかった。

そして今回もまたサプライズがあった。野生のヤマネコ、「リンクス」との遭遇である。最終日のゴール直前、今回のツアーにおける最後のパイクポイントである、スモールサーモンリバーの流れ込みで釣りをしている最中、そいつはのそりと姿を現した。

「リンクスよ!」サブガイドのアリーが声をあげた。日中、しかもカヌーがいくつも浮かんでいるところに姿を現すなんて。明らかに僕らを見ているものの、特に驚く様子もなく、僕らとは反対の方向に悠々と歩きはじめた。僕は高鳴る鼓動を抑えつつも、素早くレンズを超望遠に付け替えると、彼(彼女?)を驚かさないように距離を保ちつつゆっくりとパドリングをして追い、夢中でシャッターを切った。追う僕らに気がつくまでにほんの7、8秒ほどであったろうか。僕らに一瞥をくれると、また悠々と森の中に入って行った。

ホワイトホースに戻っての最後のパーティの日、この画像をKPのスコットに見せると、前回のオーロラのカットを見たときと同じように驚き、「今回もまた素晴らしい写真をモノにしたな」と言った。期待を裏切らない、いや、期待以上の驚きがあるのがユーコン川でのツーリングなのだ。まったくもってゼイタクな旅となったが、その期待に応えてくれるのもユーコンなのである。

カヌーイストの憧れ、ユーコン・リバーのもうひとつの魅力
ある夜、僕らはオーロラに照らされた
  1. カヌーイストあこがれの川、ユーコン。ザ・サーティマイルズを流れ下る
  2. 予想外?!ユーコン川を照らす光のカーテン、オーロラが見えた夜
  3. ユーコン川ツーリング術。いつかは下るぞ、彼の川を
  4. 息子と再びユーコンに浮かぶ。カヌーとオーロラとリンクスと

著者プロフィール

西沢 あつし (にしざわ あつし)

カヌー・カヤックを中心に執筆活動を展開している。舵社の専門誌「カヌーワールド」ディレクター。主な著書「シーカヤックで海を遊ぼう」(舵社)、「親子で楽しむSL旅行」(山と渓谷社)など。現在、ロードバイクの本を執筆中。その他旧車やキャンピングカーにも寄稿歴がある。
ホームページ(舵社カヌーワールド)