オーロラ ストーリーズ

カヌーイストの憧れ、ユーコン・リバーのもうひとつの魅力
ある夜、僕らはオーロラに照らされた

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予想外?!ユーコン川を照らす光のカーテン、オーロラが見えた夜

僕がオーロラについて持っているイメージは、真冬、広々とした見渡す限りの氷原で、天空いっぱいに広がる光のカーテンだ。真夏に、川のながれる場所、つまりユーコン川でオーロラを見られるとは思っていなかった。

その日はビッグサーモンリバーとの合流点の手前にあるキャンプ場にカヌーをつけた。ガイドブックには「Good Camp」と記されている(ガイドブックにはキャンプサイトのランク付けがされており、「Good」と「Excellent」が人気だが、数はさほど多くない)。この日はスタートから60kmほど下って来た。流れが速い川ならではだろう。

その日の夜、焚き火を囲みながら話してると、昨年もユーコンに来たというメンバーが、オーロラが出たときの話をしてくれた。「ボウって白い光りが頭上に浮かんだと思うと、次第に光りの強さが増してきたんだ」という。ふーんと頷きつつ、皆で空を見上げると、天空にモヤがかかったような感じになっていた。

「そうそう、こんな風になっていたんだ…ってこれがオーロラと違うか?」

皆、空を凝視した。

白いワタアメのようなモヤは次第に光りの強さを増し、北の方に延びていった。

「間違いない、オーロラだよ!」と言うと、焚火の光が邪魔になってきたので、少し離れた川岸に移動した。

そうこうしているうちに、一筋の光りが2本になり3本になり、そして幅が大きくなって、それこそカーテンのように揺れていた。静かで冷たいが常に形の変わる動的な明かり。どんどんと光は強くなり、川面までも照らし始めた。焚火を囲んで談笑していた仲間が、誰1人として話さなくなった。皆、空を凝視している。川の流れる音だけが変わらず木々に反射していた。

オーロラツアーが人気だと言うが、この現象をみるためだけに渡航するのも分かる気がした。この日は快晴の上に新月だったのも幸いした。また、サイトも北に向かって開かれていたロケーション的な点も良かったのだろう。何時間見ていたかわからない。というのは、ツアーの初日、「ここでは時間を忘れてください」とガイドのKatsuから時計を取り上げられてしまったからだ。

ずっと見ていたかったが、寒さはハンパではなかった。皆次第にギブアップをしてテントに戻って行った。僕はダウンジャケットまで用意していたのだが、それでも耐えられなくなるほどだった。そしてその翌朝の気温を確認すると、-5℃だった。

翌日、違う場所でのキャンプでは、うっすらと二条の光の筋が浮かんだに過ぎず、その後オーロラが僕らのサイトを照らすことはなかった。様々な条件がうまく重なった夜だったのだろう。だがいつか必ず、今度は息子たちにこの光景を見せたい。と思い続けている。

果たして今年、見ることができるだろうか。

カヌーイストの憧れ、ユーコン・リバーのもうひとつの魅力
ある夜、僕らはオーロラに照らされた
  1. カヌーイストあこがれの川、ユーコン。ザ・サーティマイルズを流れ下る
  2. 予想外?!ユーコン川を照らす光のカーテン、オーロラが見えた夜
  3. ユーコン川ツーリング術。いつかは下るぞ、彼の川を
  4. 息子と再びユーコンに浮かぶ。カヌーとオーロラとリンクスと

著者プロフィール

西沢 あつし (にしざわ あつし)

カヌー・カヤックを中心に執筆活動を展開している。舵社の専門誌「カヌーワールド」ディレクター。主な著書「シーカヤックで海を遊ぼう」(舵社)、「親子で楽しむSL旅行」(山と渓谷社)など。現在、ロードバイクの本を執筆中。その他旧車やキャンピングカーにも寄稿歴がある。
ホームページ(舵社カヌーワールド)