オーロラ ストーリーズ

カヌーイストの憧れ、ユーコン・リバーのもうひとつの魅力
ある夜、僕らはオーロラに照らされた

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カヌーイストあこがれの川、ユーコン。ザ・サーティマイルズを流れ下る

ユーコン川。カナダ・ユーコン準洲を貫くように北上し、途中進路を西に変えてベーリング海に注ぐ全長約3,200kmの北米5位の大河である。その名の響きは、1990年代のアウトドアブームを知る人には憧憬をもって迎えられる。ただ若い人には、「水曜どうでしょう」というバラエティ番組でタレントの大泉洋が連れてこられ、カヌーを漕がざるを得なかった川として知られているかもしれないが。

極北を流れるこの川を下るには、カヌーイングにしてもキャンピングにしても、万全の装備と盤石のスキル、さらにウィルダネスの中を孤独に耐えられる属性を持たないと挑戦してはいけないようなイメージを持っている人も多いのではないだろうか。

確かにベーリング海まで出ようとおもったらそうかもしれない。しかし夏季におけるホワイトホースからドーソンまでの区間では、ガイドブックからキャンプ場も含めてしっかりと整備されており、初心者でも十分楽しめる。

川自体もスタート地点としてよく使われるロワー・ラバージ辺りの流れは速いが(時速10km程度)、あとはだいたい6〜7kmくらいの速度でとうとうと流れる大河であり、いわゆる瀬というものはほとんどない。荷物満載のカナディアンカヌーであっても、本流に乗って行けば快適に下って行ける。

リバーツーリングのメッカとして、世界中からカヌー愛好家が集まる川になっている。つまり「いつかはユーコン」から「いきなりユーコン」の時代になっているのだ。

ではユーコン川の魅力はどこにあるのか。

まず、瀬にびくびくすることなしに気持ち的にはのんびりと下りながらも距離が稼げること。これはある程度の流速と川幅、そして障害物のないという条件が揃わないと難しい。これは日本の川には無いことだ。そして、釣り。上流部の流れのあるところにはグレイリング(カワヒメマス)がいる。そして水の流れの無い、よどんだところにはパイク(カワカマス)がいる。いずれもスレていないので、実によく釣れるのだ。釣った魚はもちろん食べることができるし、僕らは実際そうした。

そして1890年代後半からのゴールドラッシュという史実に残された史跡類。今行政はそこを「ザ・サーティマイルズ」と名付けて保護・整備している。特にフータリンカの蒸気船の残骸は圧巻だ。

そして最後にもう一つ付け加えたい。それが「オーロラ」だ。僕は正直、ユーコンの中流域をカヌーで下りながらオーロラを見られるとは思っていなかった。それはここを旅したカヌーイストたちが雑誌などに掲載した写真にも文章にも見られることがなかったから。

いずれも川旅というには贅沢なアイテムが揃ったところ。それがユーコン川なのだ。

ただ、日本でも有名なアウトフィッター(ガイド)である「カヌーピープル」代表のスコット氏は語る。確かに(ユーコン川は)整備されたけど、ウィルダネスの真っ只中にあることは変わらない。熊に対する対策を怠れば襲われる可能性もあるし、怪我をしてもすぐに病院に行けるわけではない。怪我や病気には注意し過ぎるくらいに注意しなければいけない場所なのは今も昔も変わらない、と。ユーコンの流れは昔から変わらず、自然と対峙することへの謙虚さと緊張を忘れてはいけないのだ。

そう、どんなに素晴しい場所であってもリスクはある。逆に言えばそれ故の素晴しさだし、そのリスクはほとんどが回避しうるものなのだ。

カヌーピープルHP(日本語版)

カヌーイストの憧れ、ユーコン・リバーのもうひとつの魅力
ある夜、僕らはオーロラに照らされた
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著者プロフィール

西沢 あつし (にしざわ あつし)

カヌー・カヤックを中心に執筆活動を展開している。舵社の専門誌「カヌーワールド」ディレクター。主な著書「シーカヤックで海を遊ぼう」(舵社)、「親子で楽しむSL旅行」(山と渓谷社)など。現在、ロードバイクの本を執筆中。その他旧車やキャンピングカーにも寄稿歴がある。
ホームページ(舵社カヌーワールド)

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