オーロラ ストーリーズ

オーロラ大爆発に出会う旅
光が僕を包み込む極上の時間

5

僕の一番のお薦め

初めて運転するスノーモービルにまたがり、凍った湖面を猛スピードで突き進む。デビッドを先頭に、目指すはグレートスレイブレイクの、とあるポイントだ。

雪上の移動に最適なスノーモービルはカナダ発祥と聞いた。運転免許は不要。なにしろここは公道じゃない。湖の上だ。

ハンドルの右レバーを握るとスピードが上がり、放せば強烈なエンジンブレーキでスピードがダウンする。運転方法はいたってシンプル。

オートバイ用のヘルメットをかぶらされたが、アクセルをふかすとすぐに猛烈に冷たい外気があごの下から吹き込んできた。

ハンドルから片手を離し、頬まで巻きつけていたマフラーのずれを直すと、冷たい氷の感触が肌に伝わる。

自分の息で凍りついたマフラーを再び自分の頬に巻きつけるというこの矛盾。冷やしているのか温めているのか、もうなんだか分からなくなってきた。

オーロラ鑑賞でカナダに行く時は、頬まで覆えるネックウォーマーがお薦めで、ずれやすいマフラーはやめた方がいい―。

帰国したらそうみんなに言って回ろう、などと考えながら雪原を突き進んで行く。

進路をブッシュの中へと変え、細い道を分け行っていくと、デビッドが急にスピードを緩めてスノーモービルを停車させた。

こんもりとした小さな雪の山は、ビーバーが作ったダム。動物たちの足跡もいたるところに見える。デビッドの自然解説が始まった。

「雷鳥が雪の中に隠れている時は、こういう空気穴があるから、手を突っ込むと簡単に捕まえられるんだ」とデビッド。

日本での雷鳥は、富山、長野、岐阜の3県で県の鳥にも指定されている貴重な鳥だ。

「stupidな鳥だから簡単に捕まっちゃうんだ」―。

正確に表現すると、「捕まっちゃうんだ(笑)」という感じ。ここでの雷鳥は、捕まえて食べる対象らしい。

極北の自然を満喫しながらスノーモービルを1時間も走らせたと思う。到着したポイントにあったのは、Pressure Ridgeという盛り上がった氷の尾根だった。

湖面の氷がお互いに圧力をかけあい、氷がそそりたっている。

日本では諏訪湖の御神渡り(おみわたり)が有名だが、そのスケールをとんでもなく大きくしたもの、と考えればいい。

割れ目から見える氷は文字通りの「水色」。大自然が作り出した美しい氷は、不思議とつくりもののように完璧な「水色」をしていた。

デネ族の人たちも、また、今ここに住む人たちもまったく同じ方法で行っているのが、凍った湖での漁「アイスフィッシング」だ。

湖面の氷に2カ所、穴を開け、水中にたらすように網を仕掛けておき、引っ張り出すと見事に魚がかかっている。

氷に閉ざされた湖の中から網といっしょに魚が引き上げられてくる。

この日釣れたのは、ホワイトフィッシュ4匹とトラウトが1匹。仕掛ける網の幅を加減することで獲りすぎを防ぐ。網から外され、ポーンと放り投げられると、そこから「急速冷凍」が始まる。

昼間とは言え、東京の我が家の冷凍庫よりも明らかに温度が低いのだから当然だ。今夜のロッジのご馳走になるのだろう。

ブラッチフォードレイク・ロッジを拠点に、極北の地にしかないいろいろなものを見たり、体験することができる。

その中でも、僕の一番のお薦めをぜひとも伝えておきたい。もし、何もやることがないなあと思ったら、ロッジの目の前に広がる凍った湖面に寝転がってみてほしい。

何も聞こえなくて、空が真っ青で、マイナス30度でも太陽は眩しくて。

頬が痛いのは冷たい風のためなのか、それとも太陽の光のせいだろうか。

そのまま目をつぶってみよう。

すべてのことから、ありとあらゆることから開放された気分になれるから。そして、この贅沢な時間は、誰にも邪魔することはできないから。

オーロラ大爆発に出会う旅
光が僕を包み込む極上の時間
  1. 贅沢な時間が始まった
  2. 真っ白で真っ平ら
  3. アクティブ&ストーム
  4. カリブーが舞い降りる
  5. 僕の一番のお薦め
  6. 極北の地の移動手段
  7. さらに楽しむ方法は

著者プロフィール

平間 俊行 (ひらま としゆき)

国内の報道機関で記者として政治取材や選挙報道に携わった後、現在は管理職として別分野の事業を担当。一方で、地方勤務時には決して「全国区」ではない地元の祭りなど、歴史や文化の奥深さに触れる取材のために歩き回り、さらに一方では度々カナダを訪れ、その素晴らしさを記事として伝え続けている。