オーロラ王国ラボ

極地の空に、音もなく華麗に舞うオーロラ。
太陽と地球の微妙なバランスが生み出すこの神秘の光は、宇宙と地球のちょうど境目で発生します。この荘厳な光は、人間が作った言葉では表現しつくせない感動を与えてくれます。

オーロラは、太陽から地球人への壮大なメッセージ。
オーロラの複雑な舞いは、太陽と地球のでき方や惑星地球号の立場についてだけでなく、自然の仕組みや人間の宇宙での立場を理解するヒントを私たちに与え、知的好奇心をくすぐってくれるでしょう。

あなたの疑問にオーロラの専門家がお答えします!

オーロラについて分かりやすく教えてほしいこと、詳しく解説してほしいことなど、オーロラの専門家が解説してくれます。

上出洋介(かみでようすけ)

北海道大学卒業。東京大学大学院修了。大学院修了後に渡米。アラスカ大学地球物理研究所、コロラド大学環境科学研究所、米国立地球物理データセンター、米国立宇宙環境研究所、米国立大気科学研究所を経て、1992年より名古屋大学太陽地球環境研究所教授。1999年より6年間、同研究所の所長を務める。その後、京都大学生存圏研究所特任教授。2010年にりくべつ宇宙地球科学館館長に就任。現在もオーロラの世界的権威として、オーロラの科学的解明に向けて研究を続けている。

オーロラQ&A

質問:宇宙服を着てオーロラの中を宇宙遊泳したら、オーロラを扇げますか? オーロラに波紋はできる?

答え:面白い質問ですね。しかし、答えはノーです。オーロラのゆらゆら揺らめくのは、電磁気的な力によるものであって、腕を振り回して扇ぐというような力学的な力ではないからです。宇宙飛行士が大きな磁石を身につけていけば、波紋をつけることができるかも。

質問:小学3年生の子供にオーロラをひとことで説明するとすれば何でしょう?

答え:あの太陽と地球の共同作業で出来る光のリング。リングは、北極に1つ、南極に1つできます。

質問:赤いオーロラと緑のオーロラは何が違うのですか?

答え:オーロラのさまざまな色は、宇宙からやって来る電気を帯びた粒子(荷電粒子)が、地球の上層大気のどういう原子、分子に衝突するかで決まります。もっともポピュラーな色である緑も赤も酸素原子に衝突してできると書かれているのを読んだことがあるでしょう。では、緑と赤に分けるのは何かというのが、質問の趣旨かと思います。
 オーロラと高度には一定の規則性があります。原子や分子が衝突を受けて光を放つまで、特定の反応時間があり、赤の場合、約110秒です。その反応時間内に別の粒子にぶつからないような大気密度が必要なのです。赤いオーロラは、大気が薄い250キロメートル以上で光ります。ちなみに、緑のオーロラは、反応時間が0.7秒です。

質問:オーロラはどれくらい寒ければ出るの?

答え:「オーロラは寒い地方に発生する」と頭から仮定している人が多いのですが、実はオーロラの発生に、地上の気温は関係 していません。オーロラは宇宙の現象ですから、地球上の気温とは関係がないことは、ちょっと考えてみればわかりますね。現在の地球では、地磁気緯度の高い場所が、寒い地方にあたっているというだけのことです。地球磁力の緯度と普通の緯度(すなわち、地理緯度)は、最大でも11.5度しか離れていないからです。
 また、私たちが生きている現在は、太陽風と地球磁場のバランスの関係で、たまたま オーロラが極地方に出現しているにすぎません。地球の磁力が今より弱ければ、オーロラベルトはもっと低い緯度へ降りて来ますし、逆に強ければどんどん高緯 度へ行って、ベルトのサイズは小さくなってしまうはずです。

質問:オーロラにはどんな形がありますか?

答え:学術的には、discrete(はっきり)オーロラ、diffuse(ぼんやり)オーロラの2つに大きく分けることができます。はっきりオーロラの中には、その形に応じて、ray(レイ:細い線)、torch(トーチ:たいまつ)、surge(サージ:大波)、corona(コロナ:冠、放射状)などと いう名前がつけられています。どのオーロラにも、基本としてカーテンの形が含まれています。
 一方、ぼんやりオーロラは、文字通りうすくボンヤリしていて、慣れないうちは、雲と間違えるかも知れません。色も感じられません。人間の視神経は、ある程度の明るさのものでなければ、色を感じませんから、ぼんやりオーロラは、ほとんどの人には白っぽいオーロラに見えることでしょう。
 これらの他に、チカチカと点滅を繰り返す、脈動(みゃくどう)オーロラがあります。周期は1秒より速いものから、10秒以上の比較的ゆっくりしたものまで、いろいろです。

質問:オーロラの予報はできますか?

答え:できるタイプのオーロラと、できないタイプのオーロラがあります。たとえば、磁気嵐のときのような大規模なオーロラは、太陽を観測していれば、オーロラ出現の2-3日前に、ある程度は予測ができます。また、太陽は27日の周期で自転していますから、一度大磁気嵐が発生すると、27日後にも見事なオーロラが現れると見当がつくわけです。
 オーロラのブレークアップは、平均すれば数時間に1度起きていますが、どこで起きるか わかりません。今では、太陽と地球の間にある人工衛星や、静止衛星からのデータ、極の上を飛んでいる衛星からのオーロラ写真、刻々と入る地球磁場のデータを使って、ある程度のオーロラ予報はできます。
 太陽から地球までのエネルギーの流れや変換のプロセスが全部解明されたときには、すべてのオーロラの予報ができるはずですが、その日はまだまだ来ないと思います。今のところ、わからないことが多すぎるからです。

質問:オーロラベルトの位置は100年後も変わらないのでしょうか?

答え:オーロラベルトの位置、すなわちオーロラベルトの大きさ、は、太陽風の圧力と地球磁場強度のバランスで決まります。現在の太陽風の平均的な値によりますと、ベルトの位置は地磁気緯度で67度くらいにあります。
このバランスは、ときどき狂います。太陽フレアなどの爆発現象が発生し、太陽風の圧力が上がるときで、このような時、地球では磁気嵐が発生し、オーロラベルトは低緯度に降りてきます。北海道やヨーロッパの各地、アメリカのフロリダやテキサス、南半球ではオーストラリアやニュージーランドでオーロラが見られるのは、このように太陽活動が高まったときです。
同じことは、太陽活動が高まらないときでも、地球の磁力が弱まったときも起き得ます。そして、実際ゆっくりではありますが、地球の磁力が弱まっているのです。原因はよくわかっていませんが、19世紀初め、ドイツのガウスが世界中の磁力を観測し歩き、地球全体の磁力を計算して以来、地球の磁力はどんどん弱まっています。フレア爆発と違い、この過程はゆっくりとしていますので、100年、1000年スケールでオーロラベルトの大きさを変えます。
地球磁力の減少がこの調子で続くならば、100年後には現在のサイズよりわずかに大きくなる(低緯度の方に降りてくる)ことが予想されます。しかし1000年後になると、オーロラベルトは東京までやってきます。地球の歴史何十億年からすると1000年くらいは、ごくわずかな時間です。皆さん、頑張って長生きしましょう。